数学が苦手でも東大に合格できた青チャートのレベルと正しい使い方

2026年4月1日

筆者は高校時代、数学が苦手科目のひとつだった。しかし青チャートを軸とした学習法を徹底し、東京大学入試本番では数学で約70%の正答率を達成、合格者平均を大幅に上回る得点で合格を果たした。苦手な受験生ほど、使い方次第で実力が大きく伸びる参考書だ。本記事では、青チャートのレベル・難易度・正しい使い方を、具体的なデータと実体験をもとに解説する。

青チャートの正式名称は、数研出版の『チャート式基礎からの数学』シリーズである。チャート研究所が編著し、数学Ⅰ+A・数学Ⅱ+B・数学Ⅲ+Cの3冊構成で展開される(新課程版)。多くの進学校で採用されており、受験参考書の中でも圧倒的な知名度と実績を誇る定番書だ。

チャート式には難易度別に複数のバージョンが存在する。難しい順に赤チャート>青チャート>黄チャート>白チャートと並んでおり、それぞれ対象とする学力層が異なる。青チャートは「共通テストから難関国公立・私大」という幅広いレベルをカバーしており、GMARCH・中堅国公立から東大・医学部まで幅広い受験生に対応できる位置づけにある。

チャート式シリーズの難易度と対象レベル

書籍名対象レベル難易度
赤チャート東大・京大・医学部など最難関志望★★★★★
青チャート共通テスト〜難関国公立・私大★★★★☆
黄チャート共通テスト〜中堅私大・国公立★★★☆☆
白チャート数学が苦手な人・高校基礎の確認★★☆☆☆

チャート式シリーズのレベル比較表(数研出版公式)
出典:数研出版(2024)「チャート式 数学 レベル一覧」https://www.chart.co.jp/goods/item/sugaku/level/level3.html#chart

新課程版での主な変更点

2022年度以降の新課程版では、数学Cが正式に復活し、巻末に共通テスト形式の「実践編」が新設された。QRコードから全例題の解説動画を視聴できる機能も追加されており、独学での活用がしやすくなっている。旧課程版を持っている場合は、新課程版への切り替えを検討したい。

青チャートの各問題には、難易度を示す「コンパスマーク(COMPASS)」が1〜5個ついている。このコンパス数を正しく理解することが、学習計画を立てる上で欠かせない。

コンパス1・2:基礎計算・基本問題(到達偏差値55)

コンパス1・2は教科書レベルの計算問題・基本問題に相当し、全問題の約5割を占める。学校配布の問題集『サクシード』や『4STEP』(いずれも数研出版)と同レベルだ。ただし、この水準をいくら完璧にしても偏差値は55止まりであり、いわゆる上位校には合格できない。コンパス1・2は、あくまでコンパス3以降の典型問題を理解するための下地と位置づけよう。

コンパス3:入試基本レベル——青チャートの登竜門(到達偏差値65)

コンパス3の問題が青チャート全体の約3〜4割を占め、難易度も一段上がる。初めて典型問題の解法を体系的に学ぶ段階であり、多くの受験生がここで最も時間を要する。コンパス3の練習問題まで8割以上をミスなく解ける状態になると、偏差値は約65に到達する。

コンパス4・5:入試標準〜応用レベル(到達偏差値67.5)

コンパス4・5は、GMARCH・中堅国公立から難関国公立の入試で問われる水準の典型問題だ。コンパス4・5の練習まで完璧にできると偏差値は67.5に達する。さらにその先のExercise(章末演習)まで習得すると偏差値70に到達できる。この偏差値70という水準は、8割以上の国公立医学部・9割以上の私立医学部の合格者平均を超えるレベルだ。

到達偏差値とコンパスレベルの対応

習得レベル内容到達偏差値(全統記述模試)
レベル2コンパス1・2 例題+練習 8割以上偏差値55
レベル4コンパス3 例題+練習 8割以上偏差値65
レベル6コンパス4・5 例題+練習 8割以上偏差値67.5
レベル8Exercise 8割以上偏差値70

出典:松濤舎「青チャートの習得レベルと到達可能な偏差値」https://shotosha.com/textbook/specific/blue-chart

青チャートで最も重要な考え方は、「この問題を解く」のではなく「この手の問題を解くための解法を身につける」という視点だ。個別の問題の正解よりも、解法の構造を抽象化して理解することで、初見の問題にも応用できる力が養われる。

ステップ① 例題に取り組む

まず例題を自力で解こうとする。解けない場合は、問題文の下にある「指針(チャート)」を読んで方針を確認する。それでも解けなければ、すぐに解答を読んで構わない。解答を読む際は「どんな知識があれば解けたか」を意識し、解法のIF-THEN構造——「〜という条件があれば〜をする」——を言語化しながら理解することが応用力向上のカギとなる。1周目はほとんどの問題が解けなくて当然だ。焦る必要はない。

ステップ② 練習問題で定着を確認する

例題の直後にある練習問題に取り組む。例題で短期記憶として得た解法が、実際に再現できるかを確認するためだ。例題が解けなくても、練習問題は解けることが多い。解けた問題には○、解けなかった問題には×をつけ、復習の優先度を明確化する。マークは消さず累積させることで、何周目に解けたかが一目でわかる状態を保つ。

ステップ③ 分散学習で長期記憶に定着させる

科学的に実証されている分散学習——間隔を空けて繰り返す学習法——に基づき、数Ⅰ+A → 数Ⅱ+B → 数Ⅲ+C → 再び数Ⅰ+Aに戻るサイクルで進める。この順番が自動的に復習間隔を生み出し、長期記憶への定着を促す。数学は積み上げの科目であるため、この進行順を原則とすることが実力向上につながる。

1テーマあたりの学習時間の目安

1テーマ(1例題+1練習)にかける平均時間は30分以内が目安だ。解けない問題に1時間以上かけても理解が深まることは少なく、次の周回で解けるようになることが多い。時間に上限を設けることで、学習効率が大幅に改善する。

解説がやや難解——動画解説を活用する

青チャートはFocus Gold(フォーカスゴールド)と比較して、解説がやや難解との指摘がある。この弱点は、新課程版でQRコードから視聴できる解説動画を積極的に活用することで補える。また解説を読む際には「なぜその手順なのか」という理由まで理解することが大切で、手順の丸暗記に陥らないよう意識しよう。

数A分野の特性に注意する

数A(特に場合の数・確率)は、解法パターンの暗記に頼りすぎると逆効果になりやすい分野だ。本来は樹形図を使った地道な書き出しが有効な問題に対して、公式で短絡的に解こうとすることで入試本番に対応できなくなるリスクがある。数A分野では「なぜその解法なのか」をより丁寧に考える姿勢が求められる。

問題数の多さと優先順位の設定

青チャートの全問題数は3,000問以上に及ぶ。完璧主義でExerciseや章末問題まですべて取り組もうとすると、中途半端に終わるリスクが高い。GMARCH・中堅国公立レベルの志望校であれば、例題と練習の徹底だけで十分だ。難関国公立志望でもExerciseは良問に絞って演習する方針が現実的な選択となる。

学習の反復サイクルと記憶定着のイメージ(Wikimedia Commons)

出典:Wikimedia Commons(2007)「Forgetting Curve / 忘却曲線」https://commons.wikimedia.org/wiki/File:ForgettingCurve.svg

青チャートのExerciseまで習得できれば、大半の大学は過去問演習に移行できる。医学部・上位校を目指す場合、または数学で高得点を狙う受験生には、『新数学スタンダード演習(スタ演)』シリーズ(東京出版)への接続が推奨される。スタ演を8割以上解ける状態になると、偏差値72.5への到達も見込める。

他の参考書との比較では、Focus Goldが解説の丁寧さと到達レベルの高さで青チャートと同等以上の評価を得ており、代替として機能する。一方、『基礎問題精講』(旺文社)は到達偏差値が55程度に留まるため、GMARCH以上を志望する受験生は青チャートへの移行を検討したい。

参考書ルートの目安

志望校レベル推奨ルート
日東駒専・共通テスト基礎問題精講 → 過去問演習
GMARCH・中堅国公立青チャート(コンパス3〜4中心)→ 過去問演習
難関国公立・医学部青チャート(Exercise含む)→ スタンダード演習 → 過去問

参考文献

・数研出版(2024)「チャート式基礎からの数学 レベル一覧」https://www.chart.co.jp/goods/sugaku_list/s001.html