「ギフテッドとは何か」をテーマに、子どもに見られる特徴や女の子に多いサイン、発達障害との関係(2E)、家庭での接し方を、3兄弟を育てた元保育士の母が解説します。わが子の個性に向き合うヒントが見つかります。
目次
ギフテッドとは?意味と定義をわかりやすく解説
ギフテッドとは、生まれつき知的能力や特定の分野の才能が、同年齢の子どもより際立って高い子どもを指す言葉です。
ギフテッドの意味と言葉の由来
ギフテッドは英語の「gifted」が語源で、「贈り物を授かった」というニュアンスを持つ言葉です。海外では才能教育の対象となる子どもを表す用語として古くから使われてきました。日本でも近年、子育てや教育の場面で耳にする機会が増えています。
才能の現れ方は一つではありません。計算や読書が突出して早い子もいれば、音楽や絵、自然観察など特定の分野だけに深く打ち込む子もいます。
日本では「特異な才能のある児童生徒」と呼ばれる
日本の教育行政では、ギフテッドという言葉はそのまま使われていません。文部科学省は「特定分野に特異な才能のある児童生徒」という表現を用いています。ギフテッドという言葉は受け取る人によって意味が異なり、現場の混乱を招きやすいことが理由とされています。
文部科学省は令和5年度から、こうした児童生徒を支える推進事業を始めています。「うちの子はギフテッドかもしれない」と感じたときは、この国の動きを知っておくと一つの安心材料になります。
IQの数値だけで決まるわけではない
ギフテッドはIQが高い子と同じ意味で語られがちですが、数値だけで決まるものではありません。文部科学省の有識者会議も、知能指数などの基準で才能の有無を一律に線引きしない方針を示しています。保育士として多くの子を見てきた経験からも、検査の数字より日々の様子に答えが表れると感じています。
ギフテッドの特徴|子どもに見られるサイン
ギフテッドの特徴は、知的な面の早さだけでなく、感覚や感情の敏感さ、興味の強い偏りなど複数の側面に表れます。
知的好奇心が強く理解が早い
多くの保護者が最初に気づくのは、理解の早さと知的好奇心の強さです。一度聞いたことをすぐに覚えたり、年齢に比べて難しい質問を次々に投げかけたりします。納得するまで「なぜ」を繰り返す姿も、よく見られるサインの一つです。
感覚や感情が敏感な傾向
ギフテッドの子どもには、感覚や感情が敏感な傾向が見られます。大きな音や服のタグを強く嫌がったり、物語の登場人物に深く感情移入して涙を流したりします。この敏感さは困った性質ではなく、世界を細やかに感じ取る力の裏返しです。
興味の偏りと強いこだわり
関心のある分野には驚くほど集中する一方で、興味のないことには取り組みにくいという偏りも特徴です。自分の中の理想が高く、完璧にできないと作品を途中でやめてしまう子もいます。下の表は、家庭で見られやすい特徴を領域ごとに整理したものです。
| 領域 | 家庭で見られやすい様子 |
|---|---|
| 知的 | 理解が早い、難しい言葉を使う、議論を好む |
| 感覚・感情 | 音や光に敏感、共感が強い、不公平に強く反応する |
| 取り組み方 | 興味の偏りが大きい、完璧主義、関心事に没頭する |
これらがすべてそろう子ばかりではありません。教員として学級を見てきた経験からも、特徴の出方は一人ひとり違うと心に留めておきたいところです。
ギフテッドの女の子に見られやすい特徴
ギフテッドの女の子は、周囲に合わせて才能を抑える傾向があり、特徴が表に出にくいといわれています。
周囲に合わせて才能を隠しやすい
女の子は、男の子に比べて周囲との協調を意識しやすいといわれます。「目立ちたくない」「浮きたくない」という気持ちから、わざと正解を言わなかったり、得意なことを控えめに見せたりすることがあります。本来の力が日常では見えにくくなるのです。男の子の活発な才能の表れ方と比べると、気づかれるまでに時間がかかることもあります。
「手のかからないいい子」として見過ごされやすい
授業中に静かに座り、指示にきちんと従う女の子は、「手のかからないいい子」と受け取られがちです。そのため本人が内側で抱える退屈さや物足りなさに、大人が気づきにくいという課題があります。困りごとが表面化しにくいぶん、ふだんのつぶやきや表情からサインを丁寧に拾いたいところです。
思春期に自己評価が揺れやすい
成長とともに、「周りと違う自分」をどう受け止めるかで悩む時期が訪れることもあります。保育士として見てきた中でも、自分の感じ方や考え方を否定された経験が、自信のゆらぎにつながる例は少なくありませんでした。家庭が安心して本音を出せる場であることが、こうした時期の支えになります。
ギフテッドと発達障害の関係(2E)
ギフテッドの中には、高い才能と発達障害などの特性を併せ持つ「2E」と呼ばれる子どもがいます。
2E(二重の特別支援ニーズ)とは
2Eは「twice-exceptional」の略で、二重の特別な教育的ニーズを持つことを意味します。突出した才能がある一方で、読み書きや対人関係などに困難を抱える状態を指します。日本でも近年、研究者や保護者が集まる学会が設立され、関心が高まっています。
才能だけ、あるいは困難だけに目が向くと、子どもの全体像を見落としてしまいます。両方の側面があると知っておくだけでも、関わり方は変わってきます。
「困りごと」が先に目立つことがある
2Eの子どもは、才能と困難が互いを見えにくくしてしまうことがあります。才能が困難を覆い隠し、困難が才能を覆い隠すため、どちらも周囲に伝わりにくいのです。学校では困りごとのほうが先に目立ち、本来の強みが見過ごされる場合もあります。
診断名にとらわれず子どもを見る
気になる様子があるときは、専門機関や医療機関に相談する選択肢があります。ただし重要なのは、診断名でわが子を分類することではありません。教員として実感したのは、その子が何に困り、何に生き生きするのかを具体的に見ることが、支援の出発点になるということです。
ギフテッドの子どもへの親の接し方
ギフテッドの子どもへの接し方の基本は、才能を伸ばすこと以上に、本人の困り感に寄り添うことです。
才能を「特別扱い」しすぎない
才能が見えると、つい「すごいね」「天才だね」と能力をほめたくなります。ですが評価が結果に偏ると、子どもは失敗を怖がるようになります。取り組んだ過程や工夫した点に目を向けて声をかけるほうが、子どもは安心して挑戦できます。
子どもの「困り感」に寄り添う
ギフテッドの子は、周囲との違いや授業の物足りなさに悩むことがあります。「わがまま」と受け取らず、まずは本人の感じ方をそのまま聞く姿勢が支えになります。気持ちを言葉にできたとき、子どもは少し落ち着きを取り戻します。
家庭でできる環境づくり
関心を深められる本や道具を身近に置くなど、家庭は才能が育つ場になります。一方で、先取り学習を詰め込みすぎないよう意識したいところです。3人の子を育てる中で意識したのは、退屈しのぎの課題ではなく、本人が「もっと知りたい」と思える余白を残すことでした。
相談先を持っておく
家庭だけで抱え込まず、相談先を持っておくと心強いものです。学校の担任やスクールカウンセラー、自治体の教育相談などが入り口になります。文部科学省も、保護者を対象とした相談支援の仕組みづくりを進めています。
ギフテッドの子育てで親が陥りやすい落とし穴
ギフテッドの子育てでは、期待のかけすぎや親の抱え込みが、子どもと家庭の負担になりやすい落とし穴です。
過度な期待と先取り教育のリスク
才能が見えると、「もっと伸ばさなければ」と先取り教育に力が入りがちです。しかし子ども本人の意欲を超えた学習は、勉強そのものへの拒否感につながることがあります。先取りした知識が学校の授業と合わず、かえって退屈さを強めてしまう場合もあります。親の期待ではなく、子どものペースを基準にすることが、長い目で見て子どもの力になります。
きょうだいや友人関係への配慮
一人の子の才能に注目が集まると、きょうだいが「自分は見てもらえない」と感じることがあります。それぞれの子に向き合う時間を意識して分けることが、家庭の安定につながります。友人関係でも、本人が孤立していないか、ふだんから様子を気にかけておきたいところです。
親自身が一人で抱え込まない
「うちの子は特別だから」と、親が一人で責任を背負い込んでしまうケースは少なくありません。同じ立場の保護者とつながったり、専門家の力を借りたりすることは、決して甘えではありません。親が安心していることが、子どもの安心の土台になります。
まとめ
ギフテッドとは、知的能力や特定分野の才能が際立って高い子どもを指す言葉です。その特徴は知的な早さだけでなく、感覚の敏感さや興味の偏りなど多面的に表れます。女の子は才能を隠しやすく、見過ごされやすい点にも注意が必要です。
忘れたくないのは、才能を伸ばすこと以上に、本人の困り感に寄り添うことです。過度な期待を手放し、子どものペースを尊重しながら、家庭を安心できる場にしていきましょう。親が一人で抱え込まず、学校や専門機関とつながることも、子どもを支える力になります。
参考文献
- 文部科学省:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/169/mext_00012.html
- 独立行政法人教職員支援機構(NITS):https://www.nits.go.jp/
- 日本ギフテッド・2E学会:https://www.jagtec.org/
- 愛媛大学教育学部附属才能教育センター:https://eu-gate.jp/

